いま紙媒体の書籍には未来はない、というのが常識だろう。著者たちは、それに反する動きを追って、ソウル編を出し、本書は台北編である。
担い手たちは、1980年代生まれの人達が多い。韓国も台湾も1987年に民主化している。台湾の昨年1年間出版物数はおよそ3万点である。それに対して日本は7万点。しかし台湾人口2300万人との比を考えたら、この数字は多いといえるだろう。
いま台湾には、小さな独立書店や出版社が200軒ほどある。初版は、多くても、せいぜい2000部といったところだ。
本書は、圧倒的な電子本と、先ごろ東京に進出した誠品書店のような大手との狭間で、副業をやりながらも、趣味で雑誌や単行本を出版販売する若者たちをインタビューしたものだ。著者たちも日本で同じような立ち位置にあるのだ。
本屋といっても、カフェや展示を併設したものが多い。紙媒体にこだわるのは、リアルな物質感と、ゆっくり落ち着いた雰囲気を求める客層だ。CDやスマホで音楽を聴く世代から、アナログを聴きたいファンが出て来た現象に似たものがあるかもしれない。
なかで私が注目したのは、朋丁、秋刀魚、舊香居など。そして田園城市の主人は、彼らよりやや年長で、独立書店の動向に、必ずしも楽観視していないとのことだ。