
ベラスケスに興味を持った本書の著者、調べてゆく過程で知った19世紀英国の好事家の数奇な運命、そして17世紀スペインのベラスケス自身。3っの時代の話が展開する。
ベラスケスは お抱えの宮廷画家に登りつめたにしては経歴がわからないことが多い。だが天才的な絵の技法は歴然としている。肖像画の対象は、王族、貴族から廷臣、庶民、小人まで別け隔てない。
ローマのドーリア・パンフィーリ美術館にあるインノケンティウス10世の肖像画は、法王自身が「似過ぎている!」と驚愕した作品だ。プラド美術館にある「ラス・メニーナス」は かつては「フェリペ4世の家族」と名付けられていたともいう。
ベラスケスは、ファン・エイクの「アルノルフィーノ夫妻の肖像」を手元に置いていたというから、「ラス ・メニーナス」での鏡の扱いにヒントを得たことは明らかだ。
影響関係を言えば、マネはプラド美術館のベラスケスから、自身の画風をほとんど剽窃したとも言える。
ローマ滞在中に描いたベラスケスの何気ない風景画からは、印象派の萌芽も見られる。
ふつう肖像画家は、モデルを長時間にわたって拘束するものだが、私の思うに、ベラスケスはごく短時間で対象を把握する才能があったのではないか。
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