オースティン後期の作品。これを読む気になったのは、ナボコフの文学講義に取り上げられていて、私は未読だったからだ。結果として、とても心温まる話で満足した。
貧しい(とはいえ召使いのいる)家庭から、豊かな伯母さんの家に養女として貰われるファニー。おそらく現代英国には、どこを探しても見当たらないだろう心優しい、内気なこの女主人公が、この話の中心だ。いつの時代にも何処にもいそうな、意地悪なもう1人の伯母さんにもめげず、軽佻浮薄な男性の求愛を退け、幼い時から保護してくれた従兄と最終的に結ばれるという、めでたしめでたしのハッピーエンドだが、随分長い物語にも関わらず、長さが気にならず、最後までどうなるか、ワクワクする。
この話はシンデレラに例えられるようだが、ファニーはそんなにイジメられる訳ではない。むしろ伯母の家庭で暖かく迎えられる。
ところで、ナボコフ本の訳者は、この小説クロフォードきょうだいを姉弟と訳しているが、オースティンの訳者は兄妹としている。西洋語では、どちらか分からない場合が多いが、この場合はどうなのだろう。私の印象では、兄妹なのだが。