2018年07月05日
『医療再生』(大木隆生)
日本の医療崩壊が叫ばれて久しい。原因は医師絶対数の不足と言われる。しかし著者は、数字をあげて、絶対数ではなく、病院勤務医数の不足を指摘する。そこには勤務医の過酷な勤務時間がある。著者は血管外科の最先端技術を米国で学び、自身の機器を開発して米国の病院で教...
Lire, c'est boire et manger. L'esprit qui ne lit pas maigrit comme le corps qui ne mange pas. 読むこと、それは飲むことであり食べることである。読まない精神は食べない肉体のように痩せてくる。
2018年07月05日
日本の医療崩壊が叫ばれて久しい。原因は医師絶対数の不足と言われる。しかし著者は、数字をあげて、絶対数ではなく、病院勤務医数の不足を指摘する。そこには勤務医の過酷な勤務時間がある。著者は血管外科の最先端技術を米国で学び、自身の機器を開発して米国の病院で教...
2018年06月26日
21世紀のドストエフスキー?読後浮かんだのはそんな思いだ。ミステリーは純文学たり得ない、というのは偏見だろう。たとえば「カラマーゾフの兄弟」は、ミステリー仕立てである。本作の作者は女性であり、登場人物は女性を中心とする。舞台はシドニーだが、狭いカトリック...
2018年06月15日
1型糖尿病の社会認知度は、まだ低い。本書は、第1人者による適切な啓蒙書だ。 1型糖尿病という表記は、著者も繰り返して言うように、誤解と偏見を助長してきた。糖尿病の9割を占める2型と同じように見られるからだ。事実は、生活習慣病とは全く関係なく、誰もが突然発症す...
2018年06月08日
ふつう医者に行くと、医者はいろいろ検査をし、コンピューター画面を見て(患者の顔は、たまにしか見ずに)、薬を処方されるだろう。ところが、この著者は検査はするが、その方法は独特なもので、勧めるのは薬ではなく食事の内容なのだ。脳梗塞、心筋梗塞、などの致命的疾...
2018年05月25日
これは近未来SF小説ではない。著者は感染症の第1人者で著作も多いが、笛吹けども踊らず、止むに止まれず最悪のシミュレーション小説で新型インフルエンザの脅威と、我が国の対策の遅れを啓蒙したものだ。2003年以降、鳥の間ではパンデミックは止まってない。鳥からヒトへ...
2018年05月10日
表参道付近を散策して、現代建築のおもしろさをみる。隈研吾、安藤忠雄、アルド・ロッシ、SANAA、ヘルツォーク& ド・ムーロンなど。しかし本に出ていないものでも、驚くようなものがある。
2018年04月25日
ザハ・ハディド案が拒否され、再コンペのあと決まった新国立競技場の隈研吾デザイン。最大の特徴は、木材の多用だ。といっても和風ということではない。むしろ日本以外で木が見直され、技術が進んでいる、というのだ。木の伐採が自然破壊だというのは間違いで、木は伐採し...
2018年04月19日
シンガーの提唱する新しい生命倫理は、これまでの西洋キリスト教由来の古い倫理を切り捨てる。古い生命倫理のひとつは、人間の生命は無条件で価値があるという考え。もうひとつは、人間は動物より価値があるという考えだ。シンガーは、無脳症、植物状態人間などの例を挙げ...
2018年04月04日
不況になったとき、経済政策で、人々の健康は、どう影響を受けるか。まさに「自然実験」国となったいくつかの国の例を本書の公衆衛生学者が報告する。公衆衛生なんて経済とは お門違いと思うかもしれないが、不況は まさに人々の生死に関わるのだ。大不況下米国のニューデ...
2018年04月04日
まぼろしの作品の電子化。アマゾンプライムで無料で読めるのに驚く。1960年「中央公論」誌発表の短編。安保闘争が終わったあとの虚脱状態に風穴を開けた皇室不敬小説だ。革命が起こり、天皇家が実名で登場し、皇太子と妃殿下の首がスッテンコロリンと転がる。前後を夢とい...
2018年04月01日
本書が書かれたのは李登輝92歳のとき。まだ存命だから、驚くべき知力である。日本精神、とりわけ武士道を賞賛、推奨されるのは面映ゆいが、明治日本の最良の部分を褒めてくれるのはやはり嬉しい。それだけに、いま台日に外交関係がない、日本が台湾を国家として認めていな...
2018年03月30日
本書が出て2年、習近平は自身の国家主席任期を無期限とする独裁への道を固めた。いかにしてそれは可能だったのか。もちろん中国史に何度も登場するように、権力闘争に勝利したからだ。出自からいえば、習近平はサラブレッドではない。李克強のほうがプリンスだ。しかしい...
2018年03月10日
ひところ、といっても1970年代から80年代だが、「日本人論」が論壇で猛威をふるった時期があった。なんと約700冊のその手の本があるという。中身は、たとえば日本人は集団主義的だ、というものだ。本書は、その手の本の不備を突いた嚆矢である。不備の1つは、「日本」を ...
2018年01月08日
この本での私にとってのハイライトは、内田の民主制論である。内田によれば、民主制の反対概念は、独裁制ではない。むしろこの2っは親和性が高い。独裁制は、しばしば民主的手続きで誕生する。知性が疲労すると独裁制が出るのだ。では独裁制の反対は何かと言えば、共和制...
2017年12月27日
副題は、竹山道雄、渡邊一夫、E・H・ノーマンであるが、平川の意図するところは、竹山道雄(平川は竹山の婿)の再評価、ノーマンの評価格下げ、渡邊の卑下癖確認、といったところか。英題The spirit of our timesの意味は、初めは良くわからなかった。The spiritは単数形...
2017年12月25日
著者の韓国モノは、読みごたえがある。iPS細胞による再生医療が主軸かと思って読んでいたが、数年前のセウォル号遭難事故が絡んできて、こっちのほうが迫力がある。この事故について日本の報道は突っ込みが足らなかったような気がする。韓国の政界と財閥の癒着、汚職を詳...
2017年12月21日
20年ほど前のことである。なにをかくそう、私の子供は3人いるが、成人してのち、私が「忠臣蔵」と言ったら、「なにそれ?」と来た。このとき、私は日本文化の継承は絶望的だと思ったものだ。数年前のことである。なにをかくそう、私にも孫が3人出来た。この孫たちが、お正...
2017年12月18日
グラハム・ハンコックは20年以上にわたって古代先進文明の消滅と再生を追いかけてきた。本書はその最新報告である。6500万年前の恐竜絶滅の原因が隕石の衝突であることが、ほぼ定説となったのは1990年代のことである。ハンコックのいうヤンガードリアス期の彗星衝突はわず...
2017年12月09日
日清日露戦争の陸軍で多大な犠牲者を出した脚気病。白米を兵食にした陸軍で蔓延したのに対して海軍は麦飯を混ぜたのが功を奏し脚気患者はほとんど出なかった。軍医森林太郎は、上官石黒忠悳の令のもと、白米食を推進した。当時脚気の真因はビタミンB1不足であることは海軍...
2017年12月03日
初期人類は いかに進化したのか。なかでも直立歩行を促したものは何か。本書は、人類の歯と手の形、特に親指の形状に着目し、初期人類の主食が何だったのかを推理して、直立歩行に至った過程を見事な仮説で提示したものだ。主食は、他の生物と競合したものであってはなら...