2019年02月10日
『近代日本一五〇年』(山本義隆)
三谷の問題史の科学技術版である。山本は、言わずとしれた全共闘議長だが、その後、科学史を書いていたりした。本書で、1960年代の反権力的姿勢が健在であることを顕す。戦前と戦後の日本の官僚、権力構造は、弱者の犠牲の上に成り立ってきた。女工哀史、植民地支配、総力...
Lire, c'est boire et manger. L'esprit qui ne lit pas maigrit comme le corps qui ne mange pas. 読むこと、それは飲むことであり食べることである。読まない精神は食べない肉体のように痩せてくる。
2019年02月10日
三谷の問題史の科学技術版である。山本は、言わずとしれた全共闘議長だが、その後、科学史を書いていたりした。本書で、1960年代の反権力的姿勢が健在であることを顕す。戦前と戦後の日本の官僚、権力構造は、弱者の犠牲の上に成り立ってきた。女工哀史、植民地支配、総力...
2019年02月10日
鷲巣力の労作である。読者の一部から、太平洋戦争開戦の夜、新橋演舞場にいたかどうかの議論があるようだが、この件については鷲巣の調査は周到である。いずれにせよ「羊の歌」は、粉飾を施した半自伝であり、事実と異なっていても問題ではない。本書で私が知ったのは、あ...
2019年02月07日
ユーモアたっぷりのダイアモンド博士の本。しかしタイトルの「セックスはなぜ楽しいか」には本書はあまり答えていない。そのためにはたぶん脳科学が必要だろう。文庫化にあたり邦題は「人間の性はなぜ奇妙に進化したのか」と変わった。たしかにこの方が内容に合っている。...
2019年02月04日
日本の近代とは何であったか。総論的に叙述した好著。左右イデオロギー史観から離れた現在、さまざまな議論の下敷きとなり得る視点を提供する。西欧を模範とした近代化。富国強兵と文明開化を両輪とした進展を4っの概念から見る。すなわち政党政治、資本主義、植民地帝国...
2019年01月14日
ラングドンシリーズ第5弾。舞台はスペイン。ビルバオ グッゲンハイムに始まり、バルセロナのサグラダファミリアへ。美女との逃避行は、いつも通りの展開。テーマは人類の誕生の謎と未来の運命。場所とテーマは違えど、プロットは同じ。ストーリー展開で、宗教界の大御所が...
2019年01月02日
近頃、年末年始は、歴史の越し方行く末を顧みる良い機会だと思うようになった。人類13000年の歩みを記した本書、再読しようと思ったのは、ダイアモンド博士が学生たちを前にした連続講義をTVで見てから、この人の魅力を再認識したのがきっかけである。博士の研究範囲の広...
2019年01月01日
いま紙媒体の書籍には未来はない、というのが常識だろう。著者たちは、それに反する動きを追って、ソウル編を出し、本書は台北編である。担い手たちは、1980年代生まれの人達が多い。韓国も台湾も1987年に民主化している。台湾の昨年1年間出版物数はおよそ3万点である。そ...
2018年12月24日
英国の古典学者が50年かけて研究した古代ローマ史。創建期から、カラカラ帝までの前半1000年を扱う。塩野七生はこの本を読む前に書き上げてしまっている。塩野のものはある意味、退屈な皇帝列伝だが、Beard のものは、考古学にまでわたる広範な資料に裏打ちされた、庶民の...
2018年12月09日
H5N1 ウィルスによるパンデミック災害を描いたもの。岡田晴恵の作品のあとに出た。大きな違いは、東京都の感染を地方に及ぼさないように首都からの交通一切を遮断することだ。結果、この小説では日本の感染者420万人、死者58万人となっている。アメリカでは死者3650万人、...
2018年10月31日
イタリア、スペインの料理ではあきたらず、ペルーからアマゾン奥地にまで入り込んでの美味追求。かなりアブナイひとだが、文章は面白い。エルブジやガストンといった有名店で研修したといえば、それだけで箔が付いたと満足するシェフが多い中、違和感を覚えたという著者に...
2018年09月25日
現代人は心も身体も疲れている、といわれる。本書は脳と腸にアプローチして、対策を提示する。人間の身体のリズムは自律神経が司るので、なかなか意識的には調整出来ない。だが生活のリズムを整えることは、やろうと思えば出来そうだ。たとえば脳を休めるためには規則的な...
2018年09月24日
日本は平均寿命、高齢者数、高齢化のスピードの3点でいずれも世界トップである。65歳以上の総人口割合が14%を超えると「高齢社会」というが、日本はすでに1995年にこれを通過。21%を超えると「超高齢社会」というが、これも2007年には通過してしまった。そのうち人口の半...
2018年09月17日
イエス誕生の馬小屋をイタリア語ではpresepio という。飼い葉桶を意味するpresepeから来ている。しかし福音書には「馬小屋」という言葉はどこにもない。長く中東に暮らしたベイリーという米国人神学者は、中東の文化では、家畜は人々と同居していたという。イエス誕生は馬...
2018年09月16日
本書の中での最初のエッセイ「眠る」にこういう文章がある。「目を覚ましているとき私たちは、逝きし者の声を、聞くことはできない。しかし夢のなかでは、それをまざまざと感じることがある。眠ることは死者の世界に生きることである。」こういう言葉に出会う本は稀である...
2018年09月15日
「洋食」という言葉は、もともと不適切な造語である。「洋服」もそうだが、中国語はより正確に「西服」「西餐」という。本書によれば、「洋食」とは「日本で独自に発展した西洋風の料理」である。その通りだ。しかしまた「和食」という言葉もあって、こちらは「伝統的な日...
2018年09月08日
日本は世界でも精神病院の数が1番多い。(30万床、絶対数でも人口比でも先進国中最高。また入院日も300日と各国平均の30日を凌駕する)。対して20世紀のうちに精神病院(manicomio)を全廃したのがイタリアだ。日本では統合失調症患者で重症とみれば入院、そして拘束 投薬...
2018年09月05日
本書の副題は「すべてが燃え上がった日」である。フランスは危険な国だ。革命が起こり、革命一歩手前になることも何度もあった。私も1度、空港で機動隊が1部の区域を封鎖し、テロに対処している光景を目撃したことがある。重機関銃を手にした隊員の目は緊張していて、一般...
2018年08月28日
「九份」とは、どういう意味なのか。元は9軒しか民家がなかったので、何を買うにも9っ分ということでこの名がついたという。ガイドブックでは読んだことのないこの手の話は、やはりこういう本でしか得られない。著者は、歌手の妹さんと共に台湾本をいくつか書いている。文...
2018年08月17日
東北大震災のとき、あっという間に200億円の義援金を送ってくれたのが台湾である。四方田犬彦の本によれば、ふつうの人が1ヶ月分の給料額をポンと寄付したともいう。司馬遼のこの本は、それよりずっと前に書かれたものだが、文中台湾の人から司馬が「日本はなぜ台湾を見捨...
2018年07月30日
ベラスケスに興味を持った本書の著者、調べてゆく過程で知った19世紀英国の好事家の数奇な運命、そして17世紀スペインのベラスケス自身。3っの時代の話が展開する。ベラスケスは お抱えの宮廷画家に登りつめたにしては経歴がわからないことが多い。だが天才的な絵の技法は...