ユーモアたっぷりのダイアモンド博士の本。しかしタイトルの「セックスはなぜ楽しいか」には本書はあまり答えていない。そのためにはたぶん脳科学が必要だろう。文庫化にあたり邦題は「人間の性はなぜ奇妙に進化したのか」と変わった。たしかにこの方が内容に合っている。
全生物の中でヒトほど奇妙な性行動をする動物もいないらしい。のべつまくなしにセックスし、オスが授乳せず、メスが排卵日を知らず、比較的早く閉経を迎える。いずれも他の動物にはほとんどないことだ。
だからそうなったについては進化論的な理由を探さなければならない。と、ここまでは分かるのだが、ダイアモンド博士も含めて今の生物進化学者達は、繁殖戦略にとらわれ過ぎだと思う。たとえば、ヒトのオスが自分の遺伝子を残す目的の為にセックスする、という仮説だ。
たしかに狩猟採集社会なら、そうだったかもしれない。しかしヒトは700万年前からはずいぶんと進化、あるいは変化したはずだ。ごく直近でも今どきの若者は、繁殖戦略を持たなくなっているではないか。