『日本の洋食』(青木ゆり子)



「洋食」という言葉は、もともと不適切な造語である。「洋服」もそうだが、中国語はより正確に「西服」「西餐」という。

本書によれば、「洋食」とは「日本で独自に発展した西洋風の料理」である。その通りだ。しかしまた「和食」という言葉もあって、こちらは「伝統的な日本料理をさすほか、とんかつやコロッケ、すき焼きも含む」(p12)とある。

本来対概念のはずの「和食」が「洋食」を含んでしまっているのは変ではないか。

さらに変なのは、ユネスコ無形文化遺産に「和食」を登録したことに関して、肝心の日本国内で「和食」が食べられなくなっている、という記述がある。(p15)

では一体、いまどきの日本人は何を食べているというのだろうか。おそらくは「多国籍料理」なのだろう。あるいは「無国籍料理」か。その内容は、ホンモノの外国料理とそのアレンジではないだろうか。つまりは、「洋食」のやり方の延長である。

いわゆる「洋食屋」のイメージは、明治大正昭和の、すき焼き 欧風カレー コロッケ とんかつ ナポリタンなどを出す、どこか職人気質の、愛想はあまり良くない絶滅危惧種的オヤジおばさんの店であった。

だが大きな流れの中では、「洋食」は「西食」よりも いまにふさわしい造語となって、生きて行っても良さそうな気がする。

まあ、そうはならないだろう。「洋食」の歴史は、本書のような形で博物誌的に残るばかりだろう。





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