『加藤周一は いかにして「加藤周一」となったか』(鷲巣力)

ぐるまん

2019年02月10日 19:27



鷲巣力の労作である。読者の一部から、太平洋戦争開戦の夜、新橋演舞場にいたかどうかの議論があるようだが、この件については鷲巣の調査は周到である。

いずれにせよ「羊の歌」は、粉飾を施した半自伝であり、事実と異なっていても問題ではない。

本書で私が知ったのは、あの加藤ですら、誤記、記憶違いがあったということである。たとえば帰国の船からの描写に「南シナ海」「玄海灘」がある。正しくは「東シナ海」「玄界灘」である。その他「羊の歌」には、事実誤認が散見するようだ。なんとなくホッとする。

鷲巣には、この後の加藤も是非追ってほしい。


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