『生きていくうえで、かけがえのないこと』(若松英輔)
本書の中での最初のエッセイ「眠る」にこういう文章がある。
「目を覚ましているとき私たちは、逝きし者の声を、聞くことはできない。しかし夢のなかでは、それをまざまざと感じることがある。眠ることは死者の世界に生きることである。」
こういう言葉に出会う本は稀である。私は若松英輔をTV番組「100分で名著」で見て、この人のいまどき珍しい真摯な語りと態度に深く感じてしまった。
若松は、番組の終わりでいつも司会者たちより、ずっと長く深々と頭を垂れるのである。なんと誠意のある人だろうか。
その人の書くものも、また実に真面目なものだ。若松は、つねにこれが自分の書く最後の文章と思って書くのだそうだ。
本書はエッセイ集の体裁を取るが、普通のエッセイ集とは大いに違う。真摯な文章に感動を憶えずにはいられない。
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