宮本常一のパロディ。「忘れられた」というより、無名の人がほとんどだ。なかには小渕首相や藤田田などの著名人も登場するが、知られざる側面を描く。佐野が取材している甘粕の満映・沖縄・中内ダイエーなどにまつわる人物が多い。ソープランドの帝王から、慎太郎裕次郎の父親まで、50人ほど。
佐野は反アカデミズムである。彼のことばを借りれば、大文字ではなく、小文字で脇役たちを語る。リクルートの江副浩正の、3人の母親を追い、江副に家庭がなかったことを教えてくれる。石原慎太郎の湘南時代で太陽族の真の主人公を紹介し、慎太郎は、その男を主役に小説を書いたことを指摘する。
佐野自身が、編集長にいじめられたジャーナリストだ。その怨恨が執念ともいえる取材魂を培ったのかもしれない。