明治天皇の死(1912)から政党政治の崩壊(1932)までの20年間を扱う。教科書的な記述である。つまり面白くない。しかも日本軍が、中国・韓国・台湾へ「進出」したと書くまでに教科書的なのは、いただけない。
日英の立憲君主制を比較して、通説とちがい、明治天皇は政治関与が少なく、近代イギリス君主は政治関与が多かったとする。さらに英国のアイルランド・インド支配と、日本の朝鮮・台湾支配を比較して、植民地経営としては似たようなもので、日本が、それほど「特異」なものではなかったと、免罪する。つまり伊藤の言いたいのは、日本は1935年頃までは、異常な国家ではなかったということである。
これは天皇自身にも当てはまり、明治天皇を当時の「キング」などの雑誌などが美化したために、昭和天皇が逆にイメージを落とし、ために昭和天皇の軍部コントロールが弱まったというのだ。
斉藤隆夫らの大正デモクラシーが、農村部にまで及んでいたから、自由な社会であったという記述とあいまって、この時代に問題がなかったかのように書かれるのは、賛成しかねる。