
「蹄」92年、「瞳」04年の作品。前者はNHKTVドラマにもなったらしいが、未見。
舞台は、明記されていないが、南アである。「蹄」とは、白人が黒人を踏みにじってきたアパルトヘイトのこと。しかし結末では蹄の意味は逆転する。天然痘ウイルスを撒き散らせて黒人を撲滅しようとする極右白人との闘い。
「瞳」のほうは、アパルトヘイトがなくなって15年後、黒人政権ができたのに、エイズ・貧困が蔓延る。エイズ治療薬に群がる製薬会社の思惑との闘い。
登場人物は、日本人医師が英雄的に描かれる。これがウソっぽい。日本人はアパルトヘイトの頃は、名誉白人として差別に加担してきたほうだ。たった1人の医師がこんなに献身的に黒人のために尽くしてきたとは考えにくい。
帚木作品では、「正義」がしばしば歪んだ形で提出されていた。この連作では見事にヒューマニズムの直球勝負となっているのが、物足りなさの主因である。