『戦争と平和』(高遠菜穂子)

ぐるまん

2010年03月31日 21:03



なぜイラクに行ったのかという問いに「イラクのような危険な地に行くことより、コンピューターの画面上のニュースを黙って見ていることの方が、よほど苦しかった、辛かった」と、高遠は語る。

ストリートチルドレンの自立支援を、「魂のお仕事」という。「平和って勝ちとるものではない、ひとりひとりの心が穏やかであること。」マザー・テレサや、ダライ・ラマに影響を受け、人間を信じよう、ただ人間を愛そう、という気持ちで動く。高遠も、シンナーに溺れた時期がある。強い人ではない。イラクの悲惨に自分を投げ入れて、はじめて生きる意味を知ったというのだ。

2004年、4回目のイラク入りで、あのイラク武装勢力による拘束が起こった。反米感情が高まり、イラクの人のなかでも、自衛隊と軍隊が区別できなくなったからである。そして「これだけ多くの人が救出に努力しているのに、こういうこと(イラクでの活動継続)を言うのか。もっと自覚をもってもらいたいね。」という、心ない小泉首相の言葉をはじめとした「自己責任」のバッシングが始まった。

「生きて帰ってきては、いけなかったのだろうか?」と彼女は煩悶する。TVの取材でも、自分を理解されないもどかしさを感じる。結局、本という形でしか、自分を表現できなかったのだろう。その意味で、本書は貴重なものだ。

愛。言葉だけでなく、本当に行動で実践している彼女の生き方に感動する。


関連記事